パティシエ 坂下寛志 Pâtissier Sakashita Hiroshi

フィナンシェの生地は休ませるか、休ませないか。 1

      2016/03/27

1色んな焼菓子の、生地を作ってから焼くまで、
一旦休ませるのか、休ませないのか、
議論が尽きない問題です。

今回は「フィナンシェ」です。

シェフによってそれぞれですが、
私は、フィナンシエを休ませません

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乳化と分離

マドレーヌとフィナンシェを比べ、決定的に違う点があります。
それは、フィナンシェには卵黄が配合されていないという事です。

卵黄には天然の乳化剤レシチンが含まれています。
これにより、乳化した生地が、そのまま長時間乳化したままでいる事が出来ます。

フィナンシェも作った後は、一旦乳化します。
しかしその後は、乳化が崩れていく一方です。

生地が分離するとどうなるか。
焼いている間に、生地の周り、ひどくなると表面からも、
ぶつぶつ油が浮きあがり、揚げた状態で焼きあがります。

それだけでなく、中央は生焼けのように、
全体的に油っぽい、悲惨な味となります。

乳化を保つために

それでも、少しでも乳化を保ちたいときは、
砂糖又はトレハロースを増やす、小麦粉を増やす、等がありますが、
これは決定的なものではありません。

トゥルモンドでは、出来上がったら常に温かい状況に保存し、
よく混ぜながら生地を絞っています。

休ませるとどうなるか

トゥルモンドのフィナンシェは、砂糖をかなり控えめにしており、
休ませると、もれなく分離します。

分離するタイミングは、置いておくとするのではなく、
温度が落ちたものを、混ぜたり絞ったりするなど、
生地を流動させた時点で、乳化が崩れます。

ですので、型に絞れば、冷蔵庫に入れようが、分離しません。

でも、プロのレシピでも、休ませるものも紹介されています。
その場合は、砂糖などの配合量が多いか、
分離しているのに気付いていないかのどちらかです。
(ごくまれに、乳化剤に相当する液糖などが、配合されているものもある。)

焼いている時に、生地と型の間に、油が少しでもふつふつしているものは、
乳化が崩れています。
_MG_7348左のものが正常、右のものが乳化が少し崩れ始めているものです。

右のものの縁が、少し色が強くついています。
これは少し油が出て、高温で揚がっているからです

休ませるメリット

そもそも、休ませることで得られるメリットは、以下の2点です。

1.形成されたグルテンの力が弱くなる。
2.砂糖が溶けきる。

詳しくは、以前説明した記事をご覧ください。
参考‥なぜマドレーヌ生地は休ませて、パウンドケーキ生地はすぐ焼くのか

生地の作成段階で、砂糖をしっかり溶かしておいて、
あとは、グルテンをできる限り出さないようにすれば、
生地を休ませなくても良いのです。

次回は

次回は、グルテンを極力出さないようにする方法を、
考えていきたいと思います。

レシピの最新版を公開しています。

https://note.mu/sakashita

 - フィナンシェ, 製菓理論 ,