パティシエ 坂下寛志 Pâtissier Sakashita Hiroshi

ヴァンドゥール・ヴァンドゥーズ(販売員)のやりがい

   

_MG_9050お店の販売員をフランス語で、男性ならヴァンドゥール、女性ならヴァンドゥーズと言います。
日本のパティスリーでは、販売員を総称して、ヴァンドゥーズと呼んだりしています。
(以下の記事内は、都合上、販売員=ヴァンドゥーズとしておきます。)

ヴァンドゥーズ

パティスリーで働いている皆さんにとって、
ヴァンドゥーズの仕事とは何でしょうか。

・接客
・ギフトのラッピング
・店内ディスプレイの設置
・店内のクリンリネス

ざっくりまとめると、こんな感じでしょうか。

ヴァンドゥーズの中には、パティシエになるために店に入ったけど、
パティシエの人数が足りているため、販売の業務を行なっている方たちがいらっしゃいます。(通称、厨房待ち。)

向かう方向性は違うかもしれませんが、全員ヴァンドゥーズです。
つまり、プロです。
ヴァンドゥーズは、パティシエの下部メンバーではありません。

とはいえ今回は、ヴァンドゥーズの皆さんにプロ意識を持ちなさいとか、
説教じみた話をするわけではありません(笑)。
一緒に、やりがいについて、考えてみようではありませんか。

やりがいってなんだろうか

やりがい‥そのことをするだけの価値と、それにともなう気持ちの張り。
(参考‥goo国語辞書
現在、接客をしていて、それが楽しい、ということは良いですね。
たくさんお菓子が販売されていくのも、お勧めしたものを購入してもらえるのも、嬉しい事だと思います。

しかし、先々に繋がるやりがいか、と言われると、少し違う気もしますね。

家族経営、例えば旦那さんがパティシエで、
ヴァンドゥーズが奥さんとかであれば、利益はやりがいでしょうし、
菓子や店が有名になる、沢山の方に食べてもらえる、
なんていうものは、やりがいでしょうね。

ヴァンドゥーズの仕事の役割

お客様はつまるところ、思い出や至福のひと時を購入しにご来店されているのだと思います。
その品が、ケーキなどのお菓子であるだけです。

購入する前から、むしろ店選びされている時から、
楽しんだり、わくわくしたりしています。

ディズニーランドなどもそうですよね。

お菓子だけで十分なら、
ミッキーも歩いていなく、キャストも笑顔でなく、
ジェットコースターをおいて、整理券をただ配布すればいいんです。

今度ディズニーに行く、という時からわくわくは始まり、
帰路も笑顔で余韻に浸れるのは、アトラクションだけのおかげではありません。

ケーキを作るだけでは、パティスリーとしては成立しないという事です。

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将来の目標はどこにある?

厨房待ちのヴァンドゥーズも含め、将来ケーキ屋さんを開きたい方は、
その目標に進むだけですよね。

そうではない一般のヴァンドゥーズはどうでしょう。

これは、シェフやオーナーなどが一緒に考えてあげるべきだと思うのです。
結婚はまた別として、
将来のビジョンが広がるような、幅広い経験ができるような環境を作れるのは、経営を含めた方向性を決定できる方々しか、できないからです。

当店の取り組み

トゥルモンドでは、そういうことにもしっかり取り組んでいきたいと思っています。
例えば、ラッピングやディスプレイは、ヴァンドゥーズに一任しています。
全責任がある、という意味ではありません。
こうしたい、というのを出来る限り支援します。

ラッピングは、どの店でもヴァンドゥーズがやるよ、と言われそうですが、
こういう感じです。
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店名の入ったリボンをするだけ、とは大きく違います。
資材を選び、デザインを考え、贈る相手が最高に喜ぶような、ラッピングをするという事です。

もちろんやり過ぎは、採算合わなくなります。
そもそも一般的に、ラッピングすることへの対価が安すぎですし‥。

ラッピングを自分たちで考える、価格を決定するなどを第一歩として、
それに合わせた商品を作る、ストーリーを考える、
そういうような経験は、他業種でも通用する経験ですよね。

ギフトはラッピングの見た目だけではなく、
誰が、誰に、どんな時に贈るかをイメージすると、
菓子自体や、詰合せ内容も変わってきます。

ギフトの種類も増え、多様な提案が生まれます。

地位を向上させるということ

そうすると、ギフトの売り上げも上がりますし、
多様なギフトは、店内を華やかにし、来客数を上げてくれます。
見てるだけでも楽しいですからね。

売上が上がる、ということは、ヴァンドゥーズの給料などの待遇も、
オーナーからすると良くしやすい理由です。

先にも繋がるやりがいで、待遇も良くなれば、さらに力が湧いてきますよね。

ラッピングだけではなく、ディスプレイや、POPデザイン、
SNSを含めた宣伝活動や、お店の運営自体に至るまで、
どこに興味がでるか人それぞれですが、
その第一歩が踏める、そういう道が開かれている、
そういう環境づくりだと思うのです。

トゥルモンドのギフトがラッピングも含め、人気が出れば、
そのラッピングを手掛けている人たちは、
有名店でパティシエをしていた、というのと同様に、
色んな所で重宝されるはずなんです。

例えば、そういう事だと思うのです。
ヴァンドゥーズの地位を向上させる、ということは。

販売員をヴァンドゥーズと呼び方を変えても、
それだけでは地位は向上しません。
接客が良い、というものには限界があります。

地位の向上は、つまるところ待遇の向上です。
向上するために付ける必要がある能力を指し示す事、
その経験が踏める環境を作る事、
そういう事が重要ではないのかな、と思っています。

結局、やりがいとは

今、接客が楽しいから、お菓子の仕事に携わって幸せだから、というのは、
それはそれで、素敵な事です。

その毎日の中で、
自分の能力が上がっていく、出来上がったものの評価が上がっていく、
それによって喜ぶ人が増えていく、結果的に待遇も良くなっていく、
そういうものが、やりがいなんだろうと思います。

パティスリーは、パティシエだけでなく、
ヴァンドゥーズやその他関わる方を含めて、パティスリーです。

全員それぞれが、大きなやりがいを持って、仕事していきたいものですね。

レシピの最新版を公開しています。

https://note.mu/sakashita

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