パティシエ 坂下寛志 Pâtissier Sakashita Hiroshi

未脱臭のナチュラルカカオバター

      2016/12/14

20130910_e3c38dチョコレートのようなカカオバターがあるのを、ご存知でしょうか。

従来のカカオバター

従来のカカオバターは、不快な臭いがするため、不味いものでした。

カカオバターは、船便でヨーロッパに運ばれ、製品となり流通するまで、
数カ月を要します。

その間に、あまり良くないにおいを吸収してしまいます。
また時間が経つと共に空気に触れることにより酸化が始まることも多々あります。
これらが重なりカカオバターは不快な臭いのするもの、という認識になってしまいました。

パティシエがカカオバターを使う時は、主にチョコレートの流動性を高めるときです。
ボンボンショコラのコーティングを薄くする時や、
ケーキに吹き付けて、表面をコーティングする時などです。

不快な臭いが付いてしまう為、添加量を上げることが出来ませんでした。

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その後、従来の製品から、不快な香りを取り除いた精製(デオドライズ)タイプのものが開発され、販売されるようになりました。

ココアバターを空気中に水分とともに散布し、においを水分の方に吸収させる方法です。
出来上がりは粒の状態となります。

吸収させるにおいは、良い悪いにかかわらず吸収させてしまう欠点があります。
不快な香りを取り除くという作業は、カカオバターなのにカカオの香りまで取り除いてしまうのです。

この製品により、カカオバターの添加量を多くすることが出来るようになりました。
ただし、無味無臭なため、チョコレート自体や製品の味は、ただ薄まることになります。

ナチュラルカカオバター

そこで登場するのが、ルカカカオ社のナチュラルカカオバターです。
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ルカカカオ社は、カカオ豆から製品まで、現地から近い場所(同国内)で全て製造する事が可能な、数少ないチョコレートメーカーです。
カカオバターも自社工場内で搾油しています。

カカオバターが嫌なにおいを吸収する前に製品化し、さらに品質を守る特別加工の袋にパックします。

収穫から製品になるまでにかかる時間が少なく、不快な臭いが付くこともありません。
すると、従来のものとは全く異なり、芳醇なカカオの香りがするものが出来あがります。
「チョコレートのようなカカオバター」です。

口にせず、袋から香りを嗅いだだけだと、これがカカオバターであることが分かる人は、ほとんど居ないように思われます。
カカオの香りがとても良い、ホワイトチョコレートと勘違いするのではないでしょうか(私もそうでした。)。

使いやすいタブレット状

従来のカカオバターは板状、
デオドライズカカオバターはほとんどがバケツタイプ、しかも3~5㎏のモノです。

空気に触れる表面積を少なくすれば、酸化も少なくなるから、板状にしたり、バケツへいれることにより表面積を最小化してます。

むかしのクーベルチュールは全て板状でした。
それは空気と触れる面積が少なくなれば香りが飛びにくくなり、酸化も最小限と考えられていたため、コイン状やペレットタイプは避けられていました。
カカオバターも同じ考えです。

現在は、梱包技術が進んだおかげで、ほとんどのクーベルチュールはコイン状やペレットタイプへ変わっています。
梱包さえしっかりしており、空気と触れる機会が少なくする事さえできれば、コイン状やペレットタイプの方が板状より利便性があります。

この考えからカサルカ社のカカオバターは小さなコイン状、しかもバケツではなく1㎏袋という形にしているそうです。

昨今は、労働時間を減らす事や、女性のパティシエールが増加などの環境変化があります。
刻んだりするよりも、コイン状のモノを計量ボールへ入れる方が、体力的にも作業効率的にも良いですよね。

まとめ

このナチュラルカカオバターは、新しいチョコレートといっても過言でない位、素晴らしい製品です。
これにより、従来の菓子が美味しくなったり、問題が解決したりするだけでなく、新しい食感や菓子なども生まれそうです。

興味のある方は、問い合わせてみてくださいね。
フィノデアロマ社(HP)

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ルカ・カカオ(カサルカ社)のショコラ

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https://note.mu/sakashita

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