パティシエ 坂下寛志 Pâtissier Sakashita Hiroshi

自転車で、ケーキの持ち帰りはできません。

   

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ごくたまに、お客様から「ケーキが崩れました」というお言葉をいただきます。

ホールケーキでもプチガトーでも、昔ながらの安定感たっぷりには作っていけないので、慎重な持ち運びをお願いしたいところです。

ホールケーキであれば、
_MG_8403こういう風に、シュークリームが乗る事もあって、より崩れやすいです。
プチガトーも大きいサイズで安定感がある訳でないので、やはり崩れやすいです。

私たちパティスリーでは、持ち帰りが出来るようにと、色々考えながら作っています。
崩れてしまう事は、私たちも、もちろん悲しいからです。
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なので、安定性はできるだけ考えますし、温度管理もできるだけ行います。
ですが、それは自宅までの持ち帰りを約束するものではありません。というか、できないです。

お客様自身でも、崩れやすい・崩れるものという認識からスタートしてほしい昨今です。

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自転車で持ち帰れる?

自転車でご来店の方を、結構見かけます。
そのお客様がケーキをご購入する時は、スタッフが出来る範囲でお声掛けさせて頂いています。

自転車での振動は、手持ちと全く違います。
自転車から降りても、同様です。
少しの斜面で傾きますし、段差は直接振動します。

私がパティシエを始めて、もう17年ほどになろうかと思いますが、
大事な時のケーキを、自転車で持ち運んだ時は、一度もありません。

自分が食べるのにおいて、崩れてもいいや、という前提以外では、運びません。
大事な時は、手持ち以外ありえません。しかも、両手持ちです。
距離があれば、迷わずタクシーです。

電車のような、人とぶつかる可能性がある際は、手持ちでも安心できません。

私でさえこのようなのですから、一般の方が自転車で綺麗に持ち帰るのは、かなり至難でしょう。

そんな事言ってくれなかった

だいぶ昔に、販売スタッフが、クレームの際にこう言われました。
「自転車では崩れやすいと、そんな事言ってくれなかった。」と。

「崩れやすい」という前提が無い故の、言葉かと思います。

私たちの範囲はどこまでなのでしょう。
注意事項は、自転車での持ち運びだけではありません。
返品不可だとか、他にもたくさんあります。
ケーキを買うのに、そういう注意事項を延々伝えるのは、雰囲気ぶち壊しです。

それでも、自転車の際は、店頭ではもちろん、
電話予約の際でも、できるだけお伝えさせて頂いている現状です。

お店の努力を知ってほしい

有名店では、対応が冷たいとかも思われがちで、
少しでも不備があると、クレームになることが多いです。

スタッフも疲れたり、緊張したり、何かのミスなどで頭が回っていなかったりと、人であるが故の状態であったりします。
お客の皆さまを、下に見ている事などあり得ません。

それでも完璧にするのがプロでしょう、と自分たちでは目標に掲げていますが、
サービス料を頂かず、薄利の業種にそこまで求めるのは、実は許してほしかったりします。

そのクレーム対応にも人件費は発生しますし、商品をお届けに上がるとなると、交通費含め、利益は全くなく、むしろ大赤字です。

そんなわけで、崩れたら悲しいという心情面だけでなく、経営面でもマイナスしかありませんから、
オーナーからスタッフまで、ケーキが崩れないように努めているのは、間違いありません。

そこで味を考えないオーナーになると、凝固剤をたっぷり入れたり、生クリームでなく、植物性ホイップクリームをふんだん使用するわけです。
美味しくなくなりますね。

まとめ

「持ち帰りで崩れた」というクレームは、ケーキ屋という業種以外では、あるのでしょうか。
アイス屋さんでは、ドライアイスでガチガチに固めるでしょうし、
お寿司屋さんのもので、自転車で持ち帰って、いくらがこぼれた、なんて逆に怒られるでしょう。

とはいえ、先述の通り、ケーキ屋さんでは、崩れないよう心を砕いています。
お客様の方でも、崩れないよう考えて、素敵な時間が過ごせるように祈っています。

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