パティシエ 坂下寛志 Pâtissier Sakashita Hiroshi

テリーヌショコラを温めると、フォンダンショコラになりま……。

   

ドモーリ社のチョコレートを使用し、赤ワインも香らせた、トゥルモンドの『テリーヌショコラ』。

おかげさまで、大変よくご購入頂いております。

たまに、「温めると、フォンダンショコラみたいになりますか?」と聞かれます。

テリーヌショコラを、電子レンジで温めてみます。_mg_7464
すると、こんな感じになります。_mg_7468
表面に紙を載せますと、脂をたっぷり吸います。_mg_7479
柔らかくはなるので、指で押してみます。_mg_7483

さて、いかがでしょうか。
食べる気がしませんね。
フォンダンショコラのように、溶けないのです。

『テリーヌショコラ』(製法編)で、テリーヌショコラの材料を紹介しておりますが、テリーヌショコラは生チョコ(ガナッシュ)ではありません。
卵が入っています
しかも、蒸し焼きにしているので、卵は凝固しています。

プリンも焼く前は液体ですけど、熱凝固した後は、温めてもソース状にはならないですよね。
それと同じです。

しかも、テリーヌショコラは、バターが入っています。
しっかり乳化状態で固まっているものは、滑らかさを演出してくれます。

しかし、固まった後に熱を加えると、油脂は液状になって流れ出します。
その結果、画像のように、ギトギトの脂がにじんで、油っぽくはなるわ、滑らかさは失われるわで、全く美味しくなくなる訳です。

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販売当初から、この質問は頂くのですが、おそらく他店で販売されている、

『常温ではガトーショコラ。冷やすとテリーヌショコラ。温めるとフォンダンショコラ。』

というような謳い文句が、関係しているのだと思います。

これは、味の事を考えると、あり得ない文言となっています。

甘さ

甘さは、温かいと強く、冷たいと弱く感じます。
ジュースがぬるいと、甘く感じるのと同じですね。

それで、プロは、食べて頂きたい温度に合わせて、甘さを調整しています。
どの温度でも、食べる事はできるでしょうけど、感じてほしいバランスは、ひとつのはずなのです。

ちなみに、トゥルモンドのテリーヌショコラは、冷やしたままを推奨しています。

バター

小麦粉が配合されてなく、バターだけが配合されていた場合、
冷え固まった後、加熱をすると、液状になって流れ出します。

バターの入ったガナッシュは、再加熱すると、分離した状態で溶けだします。
これは、とても美味しくない状態です。

フォンダンショコラで、その辺を分かっていない方々は、中のガナッシュにバターを入れます。
温めると、ガナッシュが溶けますが、バターは分離しています。

フォンダンショコラは、滑らかなチョコレートソースを出すものです。

という訳で、テリーヌショコラやガトーショコラは、卵やバターが入っているので、フォンダンショコラにはならないのです。

補足で言いますと、もともと加熱不足なだけのガトーショコラがあったりしますが、
再加熱で溶けだしても、チョコ、分離したバター、加熱不足の卵が混ざり合ったソース状の何かなんて、美味しい訳ないじゃないですか。

_mg_2190トゥルモンドでは、クラシックショコラも、テリーヌショコラも、フォンダンショコラ(フォンダンショコラ)もあります。

それぞれ、イメージした味の濃さや香りや食感があります。

それによって、形や配合が変わるのは、至極当然だと思います。

「一つで三度美味しい」みたいな、お得感に騙されないようにしてください。
それは、どれにおいても、完璧を目指していない、中途半端なものなだけです。

【合わせて読みたい】
・テリーヌショコラの美味しさ 1

・テリーヌショコラとガトーショコラの違い

・テリーヌショコラ失敗例

レシピの最新版を公開しています。

https://note.mu/sakashita

 - テリーヌショコラ