パティシエ 坂下寛志 Pâtissier Sakashita Hiroshi

この時期の苺は、旬であっても美味しくはない

      2016/04/15

3月中旬から、暖かくなると、苺の旬の時期となります。
スーパーにもたくさん苺が並び、価格も下がって、みなさんも思わず手を伸ばしたくなってしまいますよね。

なぜ、価格が下がるのでしょうか。

暖かくなり、ハウスに頼らずとも、露地栽培で収穫されます。
成育も早く、たくさん収穫されるからですね。

いわゆる旬です。
ですが、苺の旬は、結構面倒だったりします

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苺の味を見極める

_MG_84414粒の苺が有ります。
これは、同じ1パックに入っていたものから選別しました。

違いが分かるでしょうか?
左から順に、A~Dの苺としましょう。

Aは、まんまるとし、艶もあり、綺麗な赤色です。
Bは、Aよりしぼんだ形のものです。
Cは、Aよりも少し大きめですが、種の間隔が狭く、艶もわずかです。
Dは、少し赤黒いです。

違いはあれど、どれもまさしく苺です。
しかし、美味しさが全く違います。

お店によって様々ですけれど、
トゥルモンドでは、A、Bまでを、ケーキに使っています。
_MG_8449切断面です。
Aは、ちょうど良い赤みですが、
Bは、わずかに白く、
Cは、赤いですが艶(瑞々しさ)が無く、
Dは、白い筋が大変細く、艶もありません。

それで、Aはとても美味しく、Dは硬さもあり、しかも無味です。

違いの理由

なぜ、こういう違いが出るのでしょうか。
それは、暖かさによって、しっかりと成長しないままに、
大きくなったり、赤くなったりしてしまったからです。

ハウスと違い、気温は調整できません。
暖かさで、早く成長し、沢山収穫できますが、
成長不十分の苺も、沢山できてしまうのです。

選別が面倒

一般的には、Dもそれなりの味です。
色も不味そうではありませんからね。
ですので、普通に流通してきます。
どの品種でも、この時期は同じようなものです。

しっかりと苺を選別するお店は、この時期、大変面倒です。
香りや酸味はあるので、ジャム用に回しますけれど、
選別に時間もかかりますし、経験が少ないスタッフには、任せることが出来ません。

苺を甘く見ない方が良い

苺は、処理(カット)も簡単で、追熟もないし、そして使用したケーキは良く売れます。
ですので、ケーキ屋さんでは、一番よく使うフルーツです。

安定して手に入る苺の中では、個人的には、
普通のとちおとめより、あまおうの方が美味しいですが、
同じとちおとめでも、栽培方法にこだわった「職人のとちおとめ」は
あまおうよりも美味しいです。

品種だけではなく、栽培方法や、生産者の違いにでさえ、
味の違いが出てきます。

それらが一緒でも、自然のものですから、同じパックで違う美味しさのものが混在します。

一般の方でも馴染みの深い苺ですが、
一粒一粒こだわって、自信のあるケーキに仕立てていきたいですよね。
プロの誇りをかけて、しっかりと見極めてください。

レシピの最新版を公開しています。

https://note.mu/sakashita

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