パティシエ 坂下寛志 Pâtissier Sakashita Hiroshi

マドレーヌのへそ

      2016/06/08

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大きなへそのあるマドレーヌって、美味しそうですよね。
ちょっとしたコツも紹介しつつ、へそについて考えてみたいと思います。

「へそが大きい=美味しい」ではない

最初にこの見出しを持ってくるのもどうかと思いますが、
勘違いをされている方が多いので、スルーさせないように、
初めに持ってきました。

マドレーヌの型は、中央が深く、周りが浅くなっています。
ですので、周りから固まり、
固まっていない中央が盛り上がってくる仕組みです。
そういう風にできるのが、へそです。

へそは、空気やベーキングパウダーのガスが盛り上がった結果です。
盛り上がり膨らむということは、その分食感が軽くなるという事です。

程よく軽くなることは良い事ですが、
やりすぎると、スカスカの物足りない食感となります。

製法が正しい場合で、
よりへそを大きくしたいのであれば、
ベーキングパウダーを増量し、
支える小麦粉も必要に応じて増量すれば、それで可能です。

見た目で決めるのではなく、求める食感で決める方が良いです。

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製法が正しくない場合?

製法が正しくない場合というのは、どういう事かというと、
小麦粉のグルテンが、必要以上に多いときです。

グルテンは、簡単に言うとゴムのようなものです。

必要以上に混ぜてグルテンを多く出したり、
レシピで決められた小麦粉よりも、
租蛋白の量が多いものを使用したりすると、
ゴムの力が強くなり、
空気やガスで、程よく伸びてくれません。

ベーキングパウダー無しでもへそはできる

マドレーヌは、ケーク(パウンドケーキ)の一種です。
スポンジやカステラではありません。

バター少なめ(必然的に卵が多め)の配合のものは、
ベーキングパウダー無しだとへそになりません。
小さく盛り上がるのみです。

卵少なめのケークを、作ったことがある方は分かると思いますが、
周りも中央も同じ深さのケーク型でさえ、
中央が盛り上がります。
ですので、マドレーヌ型だと勝手にへそはできます。

とはいえ、食感に軽さが足りない為、
一般的にベーキングパウダーを加えます。
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型を冷やして中央を盛り上げる方法はセンスが無い

周りと中央の固まる速度の差で、へそはできます。
なので、生地を型ごと冷やす方法もあります。

しかし、元々のレシピがケークに沿っていなく、
それを無理やり見た目の問題だけで、取り入れる方法なので、
私はセンスが無いな、と思います。

家庭ならまだしも、業務でするものではないですね。
冷蔵庫の場所も邪魔ですし。

必要に応じての、へその大きさで

へそは、そんな神々しいものではありません。
『こういう味や食感にしたい』というものがまずあって、
それに対し製法や配合を調整した結果、
こういう見た目になった、というのがパティシエらしいです。

全くへそのないマドレーヌを出しているお店もたくさんあります。
柔らかい食感で、意図が見えます。

むしろへそが大きいマドレーヌのを出している方が、
スカスカでパサパサだったりします。

シンプルだからこそ、他店と比較されるお菓子なので、
誇りを持って勝負していきたいですね。

あわせて読みたい‥マドレーヌの生地を休ませた方が良い理由(追記有り)

レシピの最新版を公開しています。

https://note.mu/sakashita

 - マドレーヌ レシピ