パティシエ 坂下寛志 Pâtissier Sakashita Hiroshi

イベントや、クリスマスって、儲けてはいけないの?

   

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もうけ〔まうけ〕【×儲け】
得をすること。また、思いがけないいい目をみること。利益。利得。「儲けが大きい」「まる儲け」「ぼろ儲け」
goo辞書:もうけ

この前のクリスマスで、少し気になったツイートを見ました。
内容は、「クリスマスケーキで儲けようなどと思っちゃ駄目だ」という事です。

儲けてはいけないのでしょうか?

この「儲けよう」が、大きすぎる利益額の事を指すのかどうかは分かりません。

しかし、仮に、大きすぎる利益額だとしても、いけない事なのでしょうか。

私たちが販売しているものは「満足」です。
満足を与える手段が「商品」なだけです。

ですので、提供者によっては「サービス」などもあります。

需要と供給、それと満足度や価値などで、価格は決まります。

還元はしてほしい

クリスマスケーキには、いつもより多くの人が関わっています。
苺などの生産者もそうですし、急増する流通に対応するための、ドライバーさんもたくさんいらっしゃいます。

また、通常行わない作業が増えるスタッフも多いでしょう。
チラシを作ったり、予約の管理をしたり。短期アルバイトを雇う事もあります。

普通よりコストがかかるのですから、価格が高くなるのは、当然ではないですか。

とがめられるとするなら、「儲けて還元しない」事でしょう。

臨時ボーナスを出したり、材料の値上げを満額承認したりする、こっち側への還元もそうですし、
より美味しい商品や、新商品を作る、製造コストが下がるような、様々な投資をして、お客様への還元もすれば良いと思うのですよ。

そうやって、経済は回っていくんです。

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イメージアップ戦略

もちろん、そういうことではなくて、「企業のイメージアップ」で言っている事もあるでしょう。

でもそれは、本当に止めてほしいです。

言う企業が大きければ大きいほど、影響力は大きいです。
高価格での販売が、良くない事になるのです。

「お客様は神様です。」
この言葉の、間違った理解がよい例だと思います。

これの浸透により、客が店より立場が上、と思っているのが日本です。

基本的には、「人と人」の「商品(サービス)とお金」の交換が商売です。
ですが、立場が上と思っているので、言葉づかいも、態度も悪かったりします。
(立場が上だからといって、それで良いとも思えないのですが。)

その言葉が定着すると

それで、クリスマスケーキを高価格で販売できなくなるとしたら、どうなるでしょう。

まず最初に、スタッフへの負担が大きくなります。
金銭的にも還元できませんし、少ない人員数を求められます。

材料も、高品質なものを使えませんし、値上げがあったら、安いものを探すことになります。
それが、農家・酪農家などが儲からない事になったり、食品添加物まみれの材料ばかりのケーキとなるのです。
悪貨は良貨を駆逐するんですね。

こんな状況になったら、パティシエになる人たちは、どんどん減っていきますし、
経済だって、順回転しません。
美味しくて安全なケーキだって、出てこなくなります。

経済の順回転

利益と満足の最大値を目指すのが、企業として正しいあり方だと思います。

高価なケーキを買う事は、例えば奥さんにとって、痛いことなのかもしれない。
でも、そのお金は、燃えたり消滅したりするのではなく、ケーキを作る人の、材料を作る人の、運ぶ人の、
その商品に携わった全ての人の、利益となります。

そして、それぞれが、また違うところで、そのお金を使い、それが回りまわって、旦那さんの働くところで利益になるんです。

大きく回せば、大きく回りますし、
小さく回せば、小さく回ります。
不安が積もれば、回さない人も出てきて、経済は縮小・停止するわけです。

「儲け」には、「利益」などの「得をする事」までの意味しかありませんが、
「まる儲け」「ぼろ儲け」のように、何となく良いイメージが無いのかもしれません。
これを利用して、イメージアップの材料には、使わないでほしいと思います。

「頂く料金に見合った、または以上に満足いただけるように、全力で尽くす。」
「今までにない、新しい満足を提供する。」

これが、私の思う「お客様の為」であり、「儲け」は「その際の料金からコストを引いた差」なだけです。

レシピの最新版を公開しています。

https://note.mu/sakashita

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