パティシエ 坂下寛志 Pâtissier Sakashita Hiroshi

パウンドケーキは、なぜ失敗するのか(生焼け)

      2016/04/14

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パウンドケーキ難民のみなさん、こんにちは。
簡単そうで、思い通りに作るのは、
プロでも難しいパウンドケーキの連載がスタートです。

作り方やコツ、失敗の原因などを、プロの視点で説明させて頂きます。
今回は『生焼けの失敗はなぜ起こるか』です。

生焼けと言われる状態2つ

一般的に「生焼けになったパウンドケーキ」と言われるものは、
以下の2つの状態です。

1.生地が固まってなく、どろどろしたもの
2.羊羹のように、気泡が見られない一部分(または大部分)があるもの

1は本当に生焼け

これは、もう少し焼けば良いだけです。
竹串を指して~などと、よく言われますよね。
(プロの現場では、竹串を指している人は見かけませんが。)

私のオーブンでは約160℃で焼いています。
詳しく言うと上火165℃下火140℃です。

和栗のパウンドケーキで80分ほど、
ブランデーケーキやフルーツケーキは70分くらいです。

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2は火は通っている

2の状態の時は、火が通っているので生焼けではありません。
よって、これ以上焼いても、状態は変わりません。

これの原因は、以下の通りです。

a.レシピ(分量・配合)が悪い
b.小麦粉が少ない、または、指定のものと違うものを使っている
c.水分が多い
d.乳化ができていない
e.ベーキングパウダーが少ない

【a】
aは、もう身も蓋もないようなことですが、結構あります。
プロでも、基本の材料以外に、転化糖や各種具材、果汁やお酒を入れたり、
他にもいろいろ手を加えるので、
取りあえず作ってみたら、2の状態になってしまった、
という試作1回目は、良くありますよね。
(色々考えるより、2回目で調整した方が早いですし。)

【b】
bは、aに関連したものですが、小麦粉でも薄力粉から強力粉まであり、
薄力粉でもブランドによって、粗タンパク質量が違うので、
小麦粉変えたら、上手くいかなかったというのは良くあります。

それで、2の状態になるのであれば、次は小麦粉の量を増やしてください。

【c】
cは、果汁を入れるレシピで、良く起きる事です。
水分を減らす為の手段をとります。
果汁なら煮詰めてから加えるのが、一番早いです。
お酒なら、度数の強いものに変更して、分量を減らすなどが有効です。

卵の卵白の方が水分が多いので、
それを卵黄に一部置き換えたり、
ベースには卵黄だけ混ぜて、
卵白はメレンゲにして混ぜ込むのも良いでしょう。

色々変えたくない、という方は、小麦粉を増やしてください。

ちなみに逆転の発想で、半生パウンドとして売り出すことも可能です。
【d】
dは、乳化ができていない程度にもよりますが、
水分(果汁・お酒など)や水分を含む具材を混ぜ込むレシピだと、
底の方が2の状態になるときがあります。

乳化をしっかりしていると、ほぼそのまま焼けるのですが、
乳化があまいと比重が重いものが沈んでいくので、
水分が下に落ち、部分的に小麦粉が足りない状況になって、
2の状態になります。

バターと卵でしっかり乳化させきれない時は、
小麦粉を入れて良いので、しっかりと乳化させてください。
それでも出来上がりに不満なときは、
水分を減らすように配合を調整しましょう。

【e】
レシピにベーキングパウダーや重曹が入っているときは、
減らさない方が無難です。

ベーキングパウダーも種類があり、強さも違うので、
これも増やすことも検討してください。

とはいっても、レシピによって対応は様々

パウンドケーキといっても、
製法は様々あり、同じ製法でも使用されている小麦粉が違うだけで、
注意するポイントが変わってきたりします。

プロでも試作はします。
仮にどこかのレシピを拾ってきて使っても、
元のレシピ通りにはなりません。

なので、一般の方が、初めてのレシピで上手くいかなくても、
何も落ち込むことはありません。

プロでも参考にしたいノウハウ

成功する秘訣は、何度も作る事。
色んなレシピをあれこれ試してみるのではなく、
上手くいったレシピから、中に入れる材料を変えてみて、
バリエーションを楽しむのが、良いと思います。

そのあとで、もっとふんわりや、しっとりや、歯ごたえのあるなど、
食感を追求するのも、面白いですよね。

その為にはどうすればよいか、
数多くのパウンドケーキを作ってきた経験を生かし、
連載していきますので、よろしくお願いします。

「 パウンドケーキの作り方 」まとめ

レシピの最新版を公開しています。

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