パティシエ 坂下寛志 Pâtissier Sakashita Hiroshi

【質問・回答】バースデープレートのパイピングについて

   

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製菓学校に入学して1年になります。

坂下シェフに教えていただきたいのですが、

1.シェフのようにとても綺麗なパイピング(Happy Birthday,おたんじょうび おめでとう)はどうしたら書けるのでしょうか?
私はどうしても重なる文字(HやB,お、め)の交差箇所がこすれてしまいシェフのように上手に書けません。

2.パイピングはバタークリームでしょうか?ホワイトチョコレートでしょうか?

3.練習は何に何のクリームでやるべきでしょうか?

お忙しい所恐縮ですが教えていただけたら幸いです。

一日も早く、坂下シェフのような、まるで印刷したような文字を書けるようになりたいです。

「お問い合わせ」から、質問頂きましたので、答えてみます。

交差箇所

交差箇所はむずかしいですよね。
右利きとして話をすると、ペン先が左に進むような、「お」の左下の空間部分なども、難しかった記憶があります。
なので、交差もあるし、左にも進む「ぬ」は、かなりの難関でしたね。

さて、交差箇所ですが、交差する時は、少しペン先が他の時よりも浮いていると思います。

普段のホールケーキ用などで、「キレイな」雰囲気の字体の時は、
太さは細めで、流れでシュッシュッと書いているので、交差部分が削れることもありますが、失敗のようにはならないです。

先の画像でも、「y」の交差部分が削れていますが、キレイさは損なわれていません。
_MG_9777大きいサイズになると、線も太くなるので、削れると少し下手のように見えてしまうので、
こういう時は、削れないよう、しっかり浮かせています。

クリームの種類

使用しているのはバタークリームです。
グラシン紙で作ったコルネのペンです。
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お店によっては、グラサージュやそれに類するチョコレートを使います。
滑らかな線は書きやすいのですが、それらは緩くなりやすく、繊細な飾りが描きづらかったりします。

バタークリームだと、ある程度硬さがあるので、繊細な線でも潰れないのですが、がたがたな線になりやすいです。

ちなみに、バタークリームは、ミキサーのビーターで柔らかくして、使っています。

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練習の仕方

私はショートニングを緩めて、バットの裏に書いていました。
ハンドクリームなどは、匂いがきついので、お勧めしません。
ちなみに、絞りもナッペも、パレットでの伸しの練習も、全てショートニングです。

練習の仕方ですが、ひらがなを「あ」から「ん」まで全て書いたり、アルファベット全て書いたりする方法は、あまりお勧めしません。
また、「Happy Birthday」などの定型文を、同じようにひたすら書くのも、お勧めしません。

「Happy Birthday」や「おたんじょび~」は書けるけど、それ以外の文や、名前になると、いきなり下手になる人も多いですからね。

お勧めは、そういう定型文にこだわらず、色んな文章を、様々な雰囲気や大小で書くことです。
好きな歌詞でも良いですし、意味が分からない英語の文章でも構いません。

必要なのは、自由に書ける技術です。
ケーキの雰囲気や、贈る相手やシチュエーションに合わせる字体が必要です。
_MG_3192可愛らしすぎず、洗練さを保った字体だったり、
_MG_9111可愛くぷっくり書いたり、
_MG_9888色々巻いて、楽しんでみたり、
_MG_9934ブロック体も、もちろん。
_MG_3015日本語も、崩さずきちっと書くときや、
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_MG_8432パパやお子さんが喜ぶような、愛らしく書くときもあります。

こういう風に書けるようになるには、一定のものを書いていても、書けるようにはなりません。

トゥルモンドでは、お客様に「文字の雰囲気(可愛く・綺麗に)」や「文字の字体(筆記体・ブロック体)」もお伺いして、メッセージを書いています。

全て綺麗な雰囲気で書いておけば、無難に済みます。
しかし、ホールケーキを贈る時は、非常に大切な場面が多く、できる限り気持ちを込めたいでしょう。
その想いを、代筆させて頂くのですから、私たちも、しっかりとした技術で臨むべきでしょう。

練習で、一字一句を全力で書いていない方も多いのですが、
私はお客様のプレートを、毎回毎回、全力で書いています。

だからこそ、私は今でも技術が上昇しているのが分かります。
それをもう10年以上です。質と量が違います。

仕事ですし、お客様を待たせる訳にいかないので、コンクール並みに時間をかけていられません。
スピードもかなり重要で、書き直すことなく、質の高いプレートに仕立てるには、皆さまが思っている以上に、実は高い技術なのです。

そういう技術の習得も一歩から。
時間をかけずに習得できることは、一切ありません。

私も下手だった時代から始めて、あなたに憧れられるような文字を書けるようになりました。

有意義な毎日を過ごしてくださいね。

レシピの最新版を公開しています。

https://note.mu/sakashita

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