パティシエ 坂下寛志 Pâtissier Sakashita Hiroshi

新しいプリン『フラン ドール』

      2016/08/17

_MG_1581夏休み明けから、新しいプリンが登場します。
『フラン ドール』(仮称)。

シュークリーム、ショートケーキ、マドレーヌ、フィナンシェなど、シンプルな菓子は、他店との比較がしやすく、それゆえ、奥が深くなります。
プリンもずっと作り続けていますが、自分のトレンドというものが、その時々で有り、今回の新しいプリンの登場となりました。

牛乳と生クリーム

プリンをよく見ると、2層に分かれています。
_MG_1578これは、生クリームの乳脂肪分が、上の方に浮かんできたものです。

ですので、上層は少し味わいが濃く、下層は少しあっさりとなります。
2種類のプリンを重ねて焼いているわけではありません。

この2層になっているプリンは、生クリームを加えた贅沢仕様の証です。

卵黄のみ

卵は、卵黄のみを使用しました。
プリンの焼き上がり温度を80℃くらいにしたとき、卵黄は砂糖の効果で緩やかな固まり方(凝固温度の上昇)をしますが、
卵白は完全に固まってしまいます。
_MG_0427卵白と卵黄を混ぜると、凝固温度が70℃になる訳ではありません。

卵白自体の味はほとんどしなく、食感の為に配合することがメインとなります。

卵白という、味があまりしないものを抜く訳ですから、その分、生クリームや卵黄が多くなり、
乳・卵の風味が強く、味わい強めのプリンが出来るという訳です。

しかし、卵黄のみにすると、そもそも固まるのか?という問題が出てきます。
それは以前の「クレーム プディング」で検証済みで、乳脂防分を増やし、硬さを補う事にしています。

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バニラ

バニラは、マダガスカル産ブルボン種バニラビーンズ。
意外と、配合するのに気を使うのが、バニラです。

量が多いと贅沢ですし、香りも楽しいのですが、
プリン1個食べるとなると、甘ったるさが出てくるようにもなります。

少し多めの配合にしているのですが、次回はさらに増やしてみたり、または減らしてみたり、違う種のバニラを試してみたり、
もう少し、試行錯誤しつつ、色んな方の感想を聞いてみたいと思います。

近しい方には直接聞くのですが、アンケートはがきというものがあるので、ご感想頂けますと幸いです。
midhi

カラメル

カラメルは、実に難しいです。
焦がせばそれで良いというものではありません。
また、分量も、味わいに大きく影響してきます。

カラメルは苦いというイメージがありますが、プリンの水分を加えると、甘く感じます。
糖度が高いからです。
もちろん、焦がし過ぎは苦いくて甘いという、美味しくない状態になってしまいますが。

カラメルを流す分量を、4gから3gに変更しました。
スプーン1杯というあいまいな規定ではありません。
そうすると、人によってばらつきが出ます。また、1個1個のブレも大きくなりがちです。

まだプリンにこだわってるの、と思うパティシエの方もいらっしゃるかもしれません。
それなりに作っても、それなりに美味しいですし、ブランド力があれば、それだけで有り難く感じさせることが可能です。

でもそういうことではなくて、私は菓子の全てを理解したいと思っています。

”お菓子は魔法”と言われることがありますが、
魔方陣を書けるようになるとか、よりおしゃれな魔方陣を目指すとかではなくて、魔方陣そのものを創りたいと思っています。

子供の頃、メラゾーマを本気で練習したパティシエを、これからもどうぞよろしくお願いします。

レシピの最新版を公開しています。

https://note.mu/sakashita

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