素材の良し悪しはレシピを凌駕するけど、素材に頼ってもレシピを超えられない話。
商品に使われる素材を説明する時、「厳選された」・「希少な」・「高価な」などの飾りを付けて、付加価値を高めるような表現をします。
それにまつわる話を、少し話してみたいと思います。
「卵」は、皆さんが思う以上に、味の違いが出ます。
以前、プリンを作る時に、普通の卵から、とあるブランド卵に変えた時に、
卵の味が濃厚で、美味しくなりました。
しかし、変更後のプリンは、卵の味が思う以上に濃くなってしまい、レシピ調整が必要となってしまいました。
卵を減らせば、固まり方も当然変わります。
ただ固まる・固まらないという話ではなく、卵黄を減らせば、滑らかさが減り、卵白が減れば、弾力性が劣ります。
その他の材料の比率も変わる為、美味しくするのに微調整を繰り返しました。
プリンの味は、素材の良さだけでは決まりません。
配合や製法からなる、各素材の「味と効果のバランス」を取れなければなりません。
これは、失敗をたくさん重ね、食べる事・作る事で研究を重ねてきたプロだからこそ、出来るのです。
「フルーツ農家さんがもぎたてのフルーツで作るアイス」というのは、美味しそうです。
ですが、「プロがスーパーで買ったフルーツで作るアイス」の方が、おそらく美味しい。
そして「フルーツ農家さんのもぎたてのフルーツで、プロが作るアイス」が一番美味しい。
同じプロの人が作るのであれば、もぎたてのフルーツの方が美味しくなります。
アイスに関する、技術と知識をプロは持っています。
ですので、素材だけでプロのレシピは超えられません。
「厳選された○○を使って、この程度の味?」と思われることは、一番良くない結果です。
商品価値を落とすどころか、素材の作り手にも、恩をあだで返すような行為です。
作り手としては、素材はプラスアルファのもの、という認識からスタートすべきで、
その前に、しっかりとした土台を身に着ける必要があると思います。
付加価値で販売すること目的で、価格に合わせた配合量などの使用方法は、絶対にしてほしくありません。
買い手も、宣伝文句に惑わされないようにしたいものですね。
といっても、「農家のもぎたてフルーツアイス」に、私も惹かれるのは言うまでもありません。
惹かれる・売れるは、また別の話なんですよね。