パティシエ 坂下寛志 Pâtissier Sakashita Hiroshi

『メロンパンが危険』とか言われているので、調べてみました。1

      2016/09/16

melon

文は、谷口さんという方なのですが、説明している方は管理栄養士のAさんという事でした。

さて、Aさんがメロンパンが危険だという理由を、まとめてみました。

・メロンパンのクッキー生地に使用されるベーキングパウダー(膨張剤)にはミョウバン(硫酸アルミニウム)が含まれている。

・アルミニウムの多量摂取による人体への影響が認められた。

・メロンの“緑色”を表現するために、『青色1号』などの合成着色料が使用されている可能性。

・メロンの香りをつけるための香料

・生地を均一に混ぜ合わせるために使う乳化剤には、大豆由来の場合は「遺伝子組み換え大豆」が使われている可能性がある

・成分は糖質と脂質ばかりなので、ビタミンとミネラルをほとんどとることができない。栄養が偏るだけでなく、糖尿病や高脂血症などの生活習慣病につながる危険がある

また、谷口さん独自の意見と思われる文も、掲載されています。

・砂糖のとりすぎは体内のカルシウムを溶かしてしまうため、砂糖が多く使われたメロンパンを食べすぎることによって、将来的に骨粗鬆症を患うという懸念も出てくる。

・行列に並んでまでメロンパンを食べるなど、百害あって一利なしといえそうだ。

Sponsored Link

アルミニウム

まず、アルミニウムについて、厚生労働省が情報開示しているのがこちらです。

アルミニウムの毒性については、

ラットを用いた動物実験では、アルミニウムを多量に投与したときに腎臓や膀胱への影響や握力の低下などが認められています。

としています。

この実験の内容は、こちらにありました。
食品安全委員会セミナー -アルミニウムの健康影響と国際的な動向について-
その中の「SD ラットにおけるアルミニウム毒性試験」です。

この影響が認められた量の「多量」の値ですが、実験内の「高用量」で、
ラットに、1㎏の体重あたり300㎎のアルミニウムを毎日摂取させた時です。
70㎏のヒトにとっては21gを毎日摂取するのと、等しいと記されています。

このラット実験おける、安全性評価の結果はこのようになっています。

母親
・母体毒性
 ・loael(※最小毒性量。「調べた中で害の出た最小の値」)100㎎/㎏
・生殖毒性
 ・noael(※最大無毒性量。「調べた中で害の出なかった最大の値」)300㎎/㎏

・発生毒性
 ・loael 100mg/kg
 ・noael 30㎎/kg

仔ラットでも、体重1㎏あたり100mgのアルミニウム濃度が認められないと、害が生じなかったということです。

JECFA:アルミニウムの摂取量について[PDF]
アルミニウムの暫定耐容週間摂取量は、2006年時は1㎎/㎏/週でしたが、この実験結果も踏まえて、2013年に2㎎/㎏/週となりました。

食品の安全性を評価している国際機関(JECFA:FAO/WHO合同食品添加物専門家会議)では、人が一生涯摂取し続けても健康への悪影響がないと推定される暫定的な許容量(暫定耐容週間摂取量)として、体重1kg、一週間当たり、2mgという値を設定しています。
引用:厚生労働省

50㎏のヒトのアルミニウムの暫定耐容週間摂取量は、100㎎となります。

メロンパンにおけるアルミニウム量

さて、メロンパンに戻りましょう。

ここで、メロンパンのレシピをネットで探したのですが、ベーキングパウダーを使ったレシピが、なかなか見つかりませんでした。

ベーキングパウダーは、『メロンパンのクッキー生地に使用される』との事なのですが、パティスリーでもクッキーにベーキングパウダーを入れるのは、ごくまれで、
昔からのお店のレシピにくらいしか、入っていないのではないでしょうか(おそらく、食感をサクサクにするとかの為に配合。)

それで見つけたのが、キューピー3分クッキングのレシピです。

▼クッキー生地
バター 40g
砂糖 70g
58g
生クリーム 25g
メロンエッセンス 5g
薄力粉 210g
ベーキングパウダー 2.5g
▼パン生地
強力粉 300g
ドライイースト 9g
砂糖 45g
5g
スキムミルク 16g
58g
ぬるま湯(30℃位) 約130ml
卵にぬるま湯を加えて180mlにする)
ショートニング 18g

引用…キューピー3分クッキング
(計算上、重さの単位をgに変換)
材料使いきりで、メロンパン15個分みたいです。
焼き上がりは、1個55~60gくらいになるのではないでしょうか。

それで、1個分あたりのベーキングパウダー量は、約167㎎となります。

2.5g÷15個=0.166…g=約167㎎

ベーキングパウダー内のアルミニウム量は、以前の記事に掲載したもので算出します。
『ベーキングパウダー(膨張剤)のアルミニウム使用について 2』
効力の強い赤缶で計算します。

ベーキングパウダー内のミョウバンは25%だそうです。
しかし、ミョウバン=アルミニウムではありません

ですので、ベーキングパウダー全体としてのアルミ相当量の計算式で算出する為、
ベーキングパウダーのアルミニウム含有量は2.61%となります。

そうすると、メロンパン1個分あたりのアルミニウム含有量は、約4.4㎎となります。

167㎎×2.61%=4.3587㎎

このレシピのメロンパンは、一般的に販売されているものの半分の大きさみたいです。
(参考…コンビニとパン屋のメロンパン比較 ここまで美味しくなってカロリー減
普通は1個100gくらいのようです。

ですので、一般的に販売されているメロンパン1個分あたりのアルミニウム含有量は、約8.8㎎となります。

このことから、メロンパンだけで、1週間の暫定耐容摂取量を超えようとすると、50㎏のヒトで11.4個分となります。

続き→『メロンパンが危険』とか言われているので、調べてみました。2

レシピの最新版を公開しています。

https://note.mu/sakashita

 - 雑記