パティシエ 坂下寛志 Pâtissier Sakashita Hiroshi

トゥルモンドの仕事の進め方

   

_MG_4636パティスリーによって、仕事の進め方は違います。
広い大きなところでは仕方がないですが、部門別に分かれているところが多いです。

オーブンを使って焼菓子やスポンジ生地などを作る“焼き場(オーブン)”。

ムースなどを作ってケーキを作ったり、簡単なチョコレートのお菓子を作る“ムース場(アントルメ)”。

クッキー生地やパイ生地、クロワッサンなどのヴェノワズリー等を作る”ラミノワ”。

大きくこんな感じで分担されています。
呼称が違ったり、さらに細かい分類、専門部署があったりします。

それぞれの部署で、だいたい3年ほど就くのではないでしょうか。
1、2年だと、その店のレシピを一通り作れるというだけで、それを発展できるような、細かい理解はできません。

分担制でも、垣根を越えて相談したり、自分の仕事を早く終わらせて、積極的に他の部署を手伝いに行き、
色んな作業をして、経験を積むことが必要だと思います。

しかし、そこは今の人たちという感じで、手を差し伸べないと、動きません。

ですので、経験年数が5年あっても、ケーキを一通り作れる人は結構少ないです。
(作れるというのは、プロの作業感で、プロのお店で販売できる範囲のものを作れる、という意味。)

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全体の作業の理解が無いと、ケーキに関連性が生まれず、進化していく事はあり得ません。

例えば、ムース場でケーキを一種作るとします。

スポンジにシロップが浸み込みやす過ぎる、または浸み込み無さ過ぎる、と思っても、
どう変化させていいか分かりません。

そもそも、今回のは○○だな、と思うだけで、変化させようとも、思わないかもしれません。

焼き場からすると、生地がちゃんと焼けたかどうか、くらいで、どういう状態がケーキにとっては良いか、分かりません。
何でもかんでも、ふんわり焼くことが正しい訳ではありません。

というわけで、全部署の仕事が見れる環境と、そうでない環境では、一つのお菓子の理解度に差が出ることが多いです。

これが、パティシエが中々育たない理由の一つだと思います。
作業効率としては、短期的には良いのですが。

そこでトゥルモンドは、基本的に全員で同じ作業をする、というようにしています。
_MG_2104クッキーを焼くのも、ムースを作るのも、ひとりでやる事は、まず無いです。
先輩に作業の仕方や、製法や細かい状態の違いなど、見聞きしながら作業します。

計量だけ、という仕事もありません。
オーブン補助、みたいな役割の上下もありません。
計量ミスもしやすいですし、計量ロボではありません。
(参考…計量ミスをしない方法 1

また、オーブンからラミノワまで、全ての作業が出来る環境なので、

「スポンジも、こういう風に焼き上げることによって、ムースと組み立てた時に、こういう調和が生まれる。」、
「こうやって組み立てた時に、デメリットがあるから、クッキー生地の配合を変更した方が良いのでは無いか。」、

ケーキの全体像を考えながらの作業をすることが出来ます。

でも本当は、これは当たり前の事なんです。
シェフ一人だけで作るとすれば、必ず考えています。
だから、作るごとに進化させられるし、色んな新しいものを生み出せます。

_MG_2434このドヤ顔している、うちのチーフパティシエールのはっしーは、トゥルモンドの5年生です。
入社当時は、ほとんど何もできませんでした。
それが今では全てのお菓子を作れるのはもちろん、ウェディングケーキも作りますし、新作ケーキの試作中だったりします。
販売員としても、お店で1、2を争います。

分担制でもそうでなくとも、良いところ・悪いところはありますが、
もっとも成長できる環境にしたいと思っています。
それと並行しつつ、短い労働時間にしていきたいと努めています。

もっとパティシエ業界が、他業界から憧れる存在になっていってほしいなと、願っています。

レシピの最新版を公開しています。

https://note.mu/sakashita

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