パティシエ 坂下寛志 Pâtissier Sakashita Hiroshi

『メロンパンが危険』とか言われているので、調べてみました。3

   

melon前回…『メロンパンが危険』とか言われているので、調べてみました。2

『青色1号』などの合成着色料が使用

食品添加物の問題ですね。
確かに食品添加物は、摂取しすぎると体に悪いでしょう。
厳しい目で見ていくのは、製造者がどんどん使用しないようにする為に、良い事だと思います。

しかし、過剰に反応するのではなく、正しく理解をし、不要な不安を持たないようにすることが、大切だと思います。
摂取しすぎるとは、どういう量なのか、という事ですね。

そうでないと、道を歩くにも、ガスマスク・防護マスクしなければなりません。

さて、着色料ですが、当店でも品目はわずかですが、使用しております。
そのうち一つの「苺と木苺のクッキー」で見てみましょう。

これには、苺と木苺の果汁を、自家で煮詰めたもののほか、
木苺の乾燥パウダーも入っています。

苺や木苺は、高温で変色してしまいます。
その為、色の補正として赤色の着色料を加えています。

そして、その量の計算をしましょう。
ちなみに、レシピはこちらで公開しています。

総重量11741.8gに対し、着色料は0.9gです。
比率は、0.0076%です。

一粒の生地の重さは約7g(7000㎎)です。
その中の使用量は、0.53㎎となります。

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世界の基準

さて、世界機関である、FAO/WHO 合同食品添加物専門家会議(JECFA)が定める一日摂取許容量(ADI)を見てみましょう。

その前に、ADIとは。

一日摂取許容量(いちにちせっしゅきょようりょう、Acceptable Daily Intake、ADI)とは、食品に用いられたある特定の物質について、生涯にわたり毎日摂取し続けても影響が出ないと考えられる一日あたりの量を、体重1kgあたりで示した値をいう。単位はmg/kg/day。

具体的な算出方法は、動物実験によって悪影響が見られなかった最大の量(無有害作用量、NOAEL)を安全係数で割って求める。

安全係数としては、一般にマウスやラットなど実験動物とヒトとの種の違いを考慮して10倍をとり、さらに個人差を考慮して10倍を乗じた100倍を用いる。

「許容量」ではあるが、これが限界で少しでも超えると直ちに悪影響が出るというものではなく、くだけた表現をするなら「いくら何でもこれくらいなら問題ないだろう」として許容すると定めた量を意味する。
引用…ウィキペディア

実験動物で無害の量を、100倍(動物差を考慮して10倍、さらに個人差で10倍)した量がADIの基準値という事です。

赤の着色料のADIは、4mg/kg体重/日です。
参考…国立医薬品食品衛生研究所

50㎏のヒトで、200㎎の着色料を、毎日一生涯取り続けても問題が無いということです。
苺と木苺のクッキーを、毎日373粒食べ続けても、問題が無しです。

着色料は、苺のクッキーだけでなく、ウインナーやたくあんなど、他の食品でも使用されているため、東京都健康安全研究センターが2008~9年に行なった、
東京都民の食事からの食品添加物一日摂取量調査も見てみましょう。

検出した着色料の成人体重1 kg当りの一日摂取量(kg bw/day)は2年間の平均値で,
R40:0.00070 mg,
R102:0.00464 mg,
(中略)であった.これらのうちR40,R102,Y4,Y5,B1,B2についてはJECFAで一日摂取許容量が示されているが,
いずれもその量の0.5%未満であった

(R40は赤色40号、R102は赤色102号のこと)

忘れていましたが、メロンパンの話でした。
コンビニで販売されているメロンパンは、1個100g(100,000㎎)ほどだそうです。
苺のクッキーと同量の着色料を使用しているのであれば、1個当たり7.6㎎使用されている計算です。

それは、50㎏のヒトのADIでいうと、メロンパン26個分に相当します。
ADIなので、今日1日かけてメロンパン26個食べても、明日メロンパン24個で我慢すれば、ADIを下回ります

ちなみに、50㎏のラット(実験動物)がいるとするなら、100倍換算なので、1日メロンパン2600個食べても、無害です。

続く。
(一つ一つが長くて、まだ終わらない…)

レシピの最新版を公開しています。

https://note.mu/sakashita

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