パティシエ 坂下寛志 Pâtissier Sakashita Hiroshi

『エルキュール』(キャラメル・ショコラ・サレ)

   

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『エルキュール』Hercule
・キャラメルを練りこんだチョコレートのムース
・軽い口当たりのチョコレートのスポンジ(ビスキュイショコラ)
・キャラメルとゲランドの塩を練りこんだガナッシュ
・細かく砕いたチョコレートのサブレを、
 ヘーゼルナッツのプラリネペーストとチョコレートで混ぜ固めたもの
(パータショコラプレッセ)

ちなみにエルキュールとは、ローマ神話におけるヘラクレス。
男性的な力強さをイメージしたガトーです。

8年ほどの歴史

7_20120924152519このケーキは、前職の時に創ったものがスタートで、
そこからレシピを調整・変更しつつ作り続けてきたものです。

最初の頃から比べ、レシピも見た目も全く変わってしまいましたが、
表現したいものは、ほとんど変わりがありません。

キャラメルの甘くどさを無くす為に、
焦がし方や砂糖の量など変更してきた事のような、
見た目では分からない、
作り続けてきた私しか知らない事が、たくさんあります。

一歩ずつ山を登ってきた感覚です。

キャラメルとショコラ

2_20120924152459キャラメルとチョコレートは、
定番かつ間違いの無い組合せとされています。

ですが、キャラメルの量や、焦がし具合、
また使用するショコラのカカオの風味の種類や酸味度で、
組合せ方によっては、非常に美味しくないものも出来上がります。

甘くどくさせず、すっきりとさせつつも、
キャラメルとカカオの風味を調和させるには、
それ相応のバランス感覚が必要となります。

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お菓子に使うときは、塩っぽさがじんわりとくる天然塩を選びます。
エルキュールに使用しているのは、ゲランドの塩です。

じんわりと効かせるから天然塩を選んでいるので、
あえて粒のまま残すような使い方はしません。

あのピリッとした感じがすると、
色んなものが一瞬吹っ飛んでしまうところが、好きではありません。

エルキュールにおいての塩の役目は、
甘さを引き立てるとかではなく、
ケーキの輪郭の引き締めです。

ですので、塩は、ガナッシュ部分にしか加えていません。
ムースにも加えると、野暮ったくなってしまいます。

カカオの強さ

33このムースショコラは、ルカカカオのショコラを使用しています。
コロンビア産カカオのショコラで、荒っぽくも力強い風味が特徴です。

その為、タブレットの状態で食べると、
強くて苦手という方もいらっしゃるのですが、
生クリームや卵など、副材料を加えて調和させることで、
力強さは残したまま、柔らかい表情があるムースを作ることができます。

ビスキュイショコラ

ビスキュイショコラは、ガトーショコラのような重さは出さず、
少しふんわりとさせて、クッションのような、
食感の中でほっとする部分です。

ビスキュイショコラは、以前はサンファリーヌという配合でした。
小麦粉が入らないので、さっくりと切れはするのですが、
ふんわり感が出ない配合です。

ショコラプレッセ

ショコラプレッセの方は、ザクザクとした食感を、
ケーキに加えています。

ショコラプレッセは、最初は細かいショコラサブレではなく、
フィヤンティーヌでした。

しかし、香ばしさよりも、カカオ感で全体をまとめたく、
変更しました。
さらに、フードカッターで以前より細かくし、
インパクトより、全体の調和を取りました。

表面

エルキュールの表面は、
ピストレ(チョコレートの吹付)がしてあるように見えますが、
キャラメリゼしたナッツを、
かなり細かくして表面にまぶしつけ、
ココアパウダーを振り掛けています。

ピストレの均一な感じではなく、自然な雰囲気が気に入っています。

華美な部分をそぎ落とす

華やかさもなく、攻撃的でもないガトーです。
ただ佇んでいます。
ですが、その奥に秘めた力強さを、ぜひ感じてほしい一品です。

レシピの最新版を公開しています。

https://note.mu/sakashita

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