パティシエ 坂下寛志 Pâtissier Sakashita Hiroshi

なぜマドレーヌ生地は休ませて、パウンドケーキ生地はすぐ焼くのか 1

      2016/06/08

_MG_6560お菓子作りをされている方々の永遠の問題、
「生地を休ませる?休ませない?」問題。

今回の主題はこちらです。
『なぜマドレーヌ生地は休ませて、パウンドケーキ生地はすぐ焼くのか』

生地を休ませるメリット

マドレーヌやパウンドケーキの生地を休ませるメリットは、
主に、以下の2つになります。

1.形成されたグルテンの力が弱くなる。
2.砂糖が溶けきる。

『マドレーヌの生地を休ませた方が良い理由』でも書きましたが、
順に説明します。

1.形成されたグルテンの力が弱くなる。

バーキングパウダーも含めた、生地を膨らませる力が、
グルテンによって抑えつけられない事を意味します。
ですので、大きく膨らませることが出来るようになります。

2.砂糖が溶けきる。

砂糖を粉砂糖ではなく、グラニュー糖、上白糖、きび砂糖など、
粒子が大きい砂糖を使った場合、生地作成時には、
完全に溶けきっていない事があります。

それを時間を置くことにより、しっかりと溶けきることが出来ます。
溶けきらないと、焼成中に溶けます。

クッキーとは違い、パウンドケーキの生地などは、
焼成中、生地内部は、かなりの蒸気があります。
乾燥レーズンも、蒸されて柔らかくなるくらいです。

焼成中に溶け出すと、まんべんなく、生地が粗くなります。
そして、ざらつくような、網のような生地になります。
溶かし切ってあると、キメの揃った生地となる訳です。

粉砂糖を使わない場合は、必ずそうなるという訳ではありません。
溶け残った場合にそうなる、ということですので、
溶かし切る意識で生地を作成すれば、問題ありません。

休ませるデメリット

休ませることにより起きるデメリットは、以下の2つです。

1.常温に置くことにより、生地の温度が高くなり、
含んだ気泡が抜けてしまう。
2.細菌が増殖していく。

フィナンシェ生地であれば、これに「乳化が崩れていく」も入ってきますが、
これは、また今度の説明とします。

1.常温に置くことにより、生地の温度が高くなり、含んだ気泡が抜けてしまう。

マドレーヌは、生地作成中に、気泡は含ませないので、
これに該当するのは、パウンドケーキです。

パウンドケーキは、バターのクリーミング性を利用して膨らませます。
バターが空気を沢山含む性質の事です。

これは、バターが柔らかく、撹拌されることで、その性質を発揮します。
バターが緩くなりすぎていくと、空気を含んだまま、
支えることが出来なくなります。
その結果、空気(気泡)が抜けていきます。

そして、気泡が抜けて、膨らみが悪くなる訳です。

2.細菌が増殖していく。

一応、デメリットに入れておきましたが、
問題が出るまで休ませることは無いので、割愛します。

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製法上の違い

マドレーヌとパウンドケーキは、製法が異なります。

マドレーヌは、溶かしバターを入れる前に、卵と小麦粉を混ぜます。
パウンドケーキは、バターに混ぜ込んでいき、最後に小麦粉です。

ですので、
マドレーヌはグルテンが出やすく、
パウンドケーキはグルテンが出にくい製法
です。

今回のまとめ

上記のメリット、デメリットを考えると、こうなります。

・マドレーヌ
元々、気泡が含まれていないので、デメリットが少ない。
なので、メリットを重視して、休ませた方が良い。

・パウンドケーキ
製法上、グルテンが出来にくいので、
気泡が抜けて、膨らみが悪くしてまで、休ませる必要が無い。

一応、パウンドケーキのベストといえば、
砂糖をしっかり溶かし切り、または粉砂糖を使い、
型に入れ込んだ後、冷蔵庫で休ませる方法が考えられます。

しかし、これは、生地が中心部まで冷えたり、冷えなかったりなど、
温度のブレや、それによる、焼成のブレが出てきやすくなります。

そこに気を使うよりは、製法時にグルテンを出さないように注意したり、
租蛋白量の少ない小麦粉に変えたりした方が、手っ取り早いです。

以上により、
マドレーヌ生地は休ませて、パウンドケーキ生地はすぐ焼く方が良い
と言えます。

次回は、この休ませる理由の一つに、
「材料をなじませる」という意見がありますが、
それについて、説明したいと思います。

次回はこちら。
なぜマドレーヌ生地は休ませて、パウンドケーキ生地はすぐ焼くのか 2(材料をなじませる為か)

「 パウンドケーキの作り方 」まとめ

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