パティシエ 坂下寛志 Pâtissier Sakashita Hiroshi

【パウンドケーキ】卵を入れたら分離しました。2

   

トゥルモンドのパウンドケーキの2種類を挙げ、
バター、卵、洋酒の配合率を比較してみます。
_MG_2986【フルーツパウンドケーキ】(シュガーバッター法)
 バター 31.5%
 卵 19.1%
 洋酒 2.0%

_MG_8113【和栗のパウンドケーキ】(シュガーバッター法)
 バター 24.9%
 卵 23.6%
 洋酒 2.0%

【和栗】に比べ【フルーツ】の方が、
バターに対しての卵の量が少ないです。

【フルーツ】の方は、卵を入れる段階では分離しませんが、
漬け込みフルーツを、小麦粉を投入する前に入れてしまうと、分離します。
【和栗】に至っては、卵を入れきると必ず分離します

【和栗】は卵を入れた後、ラム酒を加えます。
水分なので、当然分離したままです。

次に、はったい粉を加えます。
はったい粉は、焦がし粉とも呼ばれ、大麦の粉を炒ったものです。
その為、グルテンは生じません。

ですが、はったい粉の分量では足りず、さらに薄力粉を加えた段階で、乳化します。
薄力粉でつなぐ、といわれる方法です。
バターの乳化ではなく、生地として乳化状態にさせます。

この方法を取ると、膨らまない、粘り気が出る、などという方もいらっしゃいます。
それは、租蛋白量の多い薄力粉を使用しているからです。
(粘り気を感じるのは、水分が多すぎるという原因もある。)

使用小麦粉まとめ
こちらのページを参照してください。
小麦粉といっても、租蛋白の含まれている量が、種類によって全く違います。
風味や性質もそうですが、含有租蛋白量もみて、使い分けします。

それで、簡単に言うと、租蛋白が多く含まれていると、グルテンが出やすく、詰まった感じに膨らみます。

ですので、膨らまないのであれば、薄力粉を見直してみるべきで、
粘り気が出るのであれば、卵の卵白部分を卵黄に置き換える、洋酒を濃度の濃いものに置き換えるなどして、
水分自体を減らすべき、だと思います。

そうはいっても納得できない方もいらっしゃると思うので、
そういう方は、トゥルモンドの和栗のパウンドケーキを、実際に食べてみる事をお勧めします。
百聞は 一見にしかず、というやつですね。

そもそも、プロは商売をしているので、分離するか・しないかで、
成功する・失敗するが決まるような、そんな不安定なものを仕事としません。

【和栗パウンド】なんて、1本¥3,800ですよ?
ピーク時は1度に40本作るので、15万円越えの作業です。
大変気を付けながら作業しますが、成功と失敗が紙一重なんてレシピは組みません。
そのギリギリが達人、みたいで聞こえは良いですけど、そんなの素人のレシピです。

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そもそも、なぜ分離してしまうくらいの卵を入れるのか?という疑問が出てくると思います。

それは旨味です。美味しいからです。
あとは保形と食感ですね。
小麦粉が作り上げる骨格と、卵の凝固は、食感がまるで違います。

ですので、旨味だけであれば卵黄だけを配合すれば、事足りますが、
食感の為に卵白も配合する為、結果的に水分が多めになります。
すなわち、分離しやすくなるという事です。

最終的に「分離してしまうのですが、どうすれば良いか。」の答えです。

分離させないようにするのではなく、最終的に生地が繋がっていれば大丈夫です。
それなのに美味しくないのであれば、まずは参考しているレシピと、材料が正確に同じものを使っているかを調べましょう。
同じであれば、美味しくなるように、配合を増減させましょう。

その配合の増減が、プロの試作レベルとなり難しい為、断念したり、違うところに気を使い始めたりするのですけどね。

そういう配合の増減を楽しめるのが、パティシエやお菓子作りの素質・才能だと思いますよ。

【合わせて読みたい】
・【パウンドケーキ】卵を入れたら分離しました。1

・パウンドケーキは、なぜ失敗するのか(生焼け)

・パウンドケーキの型はどれを使うか

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 - パウンドケーキの作り方, 製菓理論