パティシエ 坂下寛志 Pâtissier Sakashita Hiroshi

【プロのパティシエレシピ】
『バヴァロアーズ ピスターシュ』(ピスタチオのババロア)3※追記有

      2016/02/20

_MG_5196『バヴァロアーズ ピスターシュ』(ピスタチオのババロア)1
『バヴァロアーズ ピスターシュ』(ピスタチオのババロア)2

手順

<手順>
・牛乳と生クリームAを温める‥1。
・生クリームBを泡立てておく(フェッテ)。
・卵黄に砂糖とピスタチオペーストを混ぜる‥2。
・2に1を加える。
・炊き上げる。
・ゼラチンなどの凝固剤を加える。
・濾して冷やした後、フェッテと合わせる。

どこまで炊くか

アングレーズソースを炊くときは、
76~80℃を目安とします。
76℃で炊き上げたものと、80℃で炊き上げたものは、
硬さが全く違います。

殺菌の観点で考えると、
70℃以上で1分間以上、または80℃以上で数秒加熱しないといけません。
特に気を付けなければならないのが、サルモネラ菌です。

しかし、プロの現場では、万が一のことを考え、
サルモネラ菌検査を合格している卵を使用するのが通常です。
ちなみにトゥルモンドでは、殺菌済み加糖卵黄を使用しております。

ですので、殺菌の事を深く考えることもなく、
できあがりの硬さのみを想像して、炊き上げております。

誤解の無いように伝えておきますと、
アングレーズソースの作成する量自体が多く、
76℃を炊き上げの目標としたとしても、
70℃に入ってから1分以上かかってしまう為、
殺菌はできております。

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炊きあげの目安

炊きあげの目安としては、
ヘラについたアングレーズソースの粘度で見ます。
_MG_5582もちろん、温度計も使いつつで構いません。
しかし、それに頼り過ぎず、炊きあげの粘度で、
できあがりの状態を想像することが必要です。

フェッテを合わせる温度

アングレーズを濾した後、冷やします。
フェッテと合わせた時に、分離しないようにするためです。

アングレーズとフェッテの量のバランスにもよりますが、
通常は25~30℃くらいまで冷やします。
_MG_5123
できあがりは20~23℃くらいでしょうか。
_MG_5166温度が高いと分離しやすくなりますし、
低いと流動性が無く、型に流し込みづらくなります。
セルクルなどに流し込む時は、
流動性が有りすぎても、流れ出してしまいます。

追記
アングレーズソースとフェッテと合わせるときは、
一度に合わせきります。
25~30℃は、高めの温度です。
生クリームの相手としては、あまり良くない温度です。

出来るだけダメージを少なく、低い温度まで持っていきます。
ダメージをもっと気にする場合は、アングレーズの温度を、
もっと下げても良いです。
その分モンタージュしづらくなってしまいますので、
注意してください。
また、流動性がないと、
それはそれでバヴァロア―スに負荷がかかるので、
脂っぽくならない、少ない手数で勝負する必要が出てきます。

ゼラチンなどの凝固剤を加える

温度が上がったら、ゼラチンなどの凝固剤を加えます。
先にふやかしておいたゼラチンを入れてから、
炊き始める方もいらっしゃいます。

ゼラチンに含まれた水分を飛ばす為などの理由みたいですが、
炊き上げる過程の温度と時間で、そんなに水分は飛びません。

むしろ、熱によって、ゼラチンの効力は弱まる為、
固まっても離水したり、毎回硬さがばらつく原因にもなります。

また、ジュレデセール、プードルクレームを使用する場合も、
ゼラチンと同様な事が言えたり、
温度上昇途中で粘度が出てきて、
炊きづらい・気泡を含みやすくなる等の問題が出てきます。

以上より、凝固剤・ゲル化剤を加えるタイミングは、
炊き上げ後を推奨します。

まとめ

卵さえ安全なものを使用して、
通常の衛生レベルを保っておけば、
炊きあげの温度は、あまり気にする必要はありません。
できあがったケーキも、何日も販売するわけでもありませんし。

76℃よりも下回ってくると、卵の凝固力が足りず、
ケーキが緩い、離水してくる、何てこともあります。
温度を上げ過ぎて、一部凝固を起こしてしまっても、
同様な事が起きます。

レシピによって、若干異なる部分は出てきますが、
基本的な考え方を理解して、各作業に取り組んでほしいです。

次回は、分量編です。

レシピの最新版を公開しています。

https://note.mu/sakashita

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