パティシエ 坂下寛志 Pâtissier Sakashita Hiroshi

フィナンシェの分離と対処法 3

   

_MG_2226フィナンシェの分離には、再加熱が有効なのですが、その再加熱方法に、注意ポイントがあります。

それは、下記2点です。

・湯煎で、ゆっくりと加熱する。
・35℃以上に上げる。

湯煎で、ゆっくりと加熱する。

フィナンシェの生地の主体は卵白なので、生地の入ったボウルを、そのまま直火で温めたりすると、すぐに焦げ付いたりしてしまいます。

湯煎で、やわらかく温度を上げてください。

35℃以上に上げる

30℃くらいでも生地は緩まり、乳化した状態にみえます。
しかし、35℃まで上げないと、上手くいかないようです。
_MG_2253右が35℃まで。
中央が30℃。左は30℃まで上げたものを、2・3分放置して、絞ったもの。
(左は、焼成途中で、取り出しました。)

こうしてみると、一目瞭然です。
30℃では分離はしていませんが、生地の状態が少しおかしいです。
また温度が高くなく、すぐに分離するような温度まで落ちるので、作業性が悪いです。

ちなみに、今回はスタッフの勉強の為にも、少量で実験しています。
実際の作業を考えると、38℃以上には上げた方が良い気がします。

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冷蔵庫や常温で寝かせて、それから絞って焼くレシピを、最初から使用している方は、
焼いている途中に、生地の周りから油がふつふつ出るのは、そういうものと思っておられるでしょう。

その場合は、生地の最後の方は、手の熱で分離も進み、商品価値の無いものが出来あがっているはずです。

それらは全て乳化していない状態です。

生地を寝かせることにで、グルテンが緩まり、膨らみやすくなります。
(参考…なぜマドレーヌ生地は休ませて、パウンドケーキ生地はすぐ焼くのか 1
しかし、休ませると、生地の温度が下がり、乳化状態が崩れます。

ですので、どうしても休ませたい方は、温度を保ちつつ型に絞ってから、休ませたい方が良いでしょう。

と言いつつも、フィナンシェでグルテンを出してしまうと、もちっとした弾力のある食感となり、
本来のもろっとした、ほどける食感にはなりません。

というわけで、休ませる必要のない生地づくりを目指すことが、大切だと思います。
その話は、また今度。

※今回の再加熱の方法で、元に戻らないレシピもあります。
バター以外の油脂(チョコレート、ナッツのペーストなど)が入っていると、その傾向があるように思います。
ですので、再加熱をしなくて良いような作業を目指すことが重要です。

・フィナンシェの分離と対処法 1

【合わせて読みたい】
・フィナンシェが油っぽいのは。1

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https://note.mu/sakashita

 - フィナンシェ, 製菓理論 ,