パティシエ 坂下寛志 Pâtissier Sakashita Hiroshi

レモンケーキを語らせてください。『リモーネ シチリアーノ』

   

_MG_1040ついに登場しました。レモンケーキ『リモーネ シチリアーノ』

レモンの形をした、レモンケーキ。
少し前だと、古臭いイメージです。

レモンの形をして、表面にグラスアローやホワイトチョコレートが塗ってある、レモン風味のお菓子、そんなイメージですよね。

それを、進歩している素材、新しい製法を掛け合わせると、
とても旨く、質の高い、新しいお菓子となりました。

酸っぱい。

シチリア産レモンの果汁をたっぷり入れる事で、
生地自体に、しっかりとした酸味を持たせるようにしました。

果汁という水分は、焼菓子には天敵です。
乳化はしないし、気泡を消して内層は膨らまず、膨らんだとしても、その重さで生地を潰してしまう、そんな厄介なものです。

しかもレモンの酸性度は高く、厄介さが増しています。

ですので、従来のレモンケーキは、生地自体はあまり酸っぱくなく、
焼いた後に果汁を浸したり、レモンのコンフィを混ぜ込んだりします。
レモンのペーストなんかを入れている所もありますよね。

そうではなく、生地をレモンの果汁だけで、しっかりと酸っぱくしました。
これは今までの経験と、試作を重ねた賜物です。

きゅんとする酸っぱさです。
焼菓子を食べて、この酸っぱさを感じられるのは、あまり無い体験のように思います。

軽くない。

泡立てた生地による、スポンジのような、ふわふわの食感ではありません。
バターをしっかり入れた、パウンドケーキです。

どうして、こうしたかというと、
ふわふわタイプだと、果汁を入れ込むことが出来ないからです。

浸み込ませるか、酸っぱいジャムを塗るかしか、方法が無くなります。

今回のレモンケーキは、ひとつで十分満足させ、記憶に残るもの、を作りたかったので、ふわふわなイメージはありませんでした。

かといって、重い口当たりかというと、もちろんどんな訳がありません。
しっかりとバターが配合されているのに、柔らかく、口当たりが良いのは、
水分が多いのと、レモンの強めの酸味です。

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砂糖が溶けない。

レモンケーキは、表面にグラスアローやホワイトチョコレートを塗るのが一般的です。
酸っぱいケークとのバランスの為と、見た目の為ですね。

酸っぱいケークでないところは、もはや見た目の為だけです。

グラスアローとホワイトチョコレートで分かれているのは、
グラスアローだと、溶けてしまうんですね。
冷凍もできませんし。
ですので、ホワイトチョコレートの方が、流通している気がします。

私としては、ホワイトチョコレートの選択肢はありませんでした。
あの、シャリっとした食感が欲しかったのです。
カカオの香りも、これには不要と思いますし。

そんな訳で、溶けないグラスアロー作りに取り組みました。
そうでないと、当日中しか食べれず、贈り物としても不適ですからね。

中々作れないんですよね、これが。

高価でない。

このレモンケーキは、ずっしりサイズの60g。それで¥250。

『フィナンシェ バニーユ エクセラン』で40g。『マドレーヌ』で26g。
そう考えると、お得ですよね。
ですが、原価が安いということではもちろんありません。

マーガリンやレモン香料など、原価を抑えられるようなものは、一切配合していませんし、何なら、アーモンドパウダーまで配合してしまっています。

原価が低いというわけではなくて、トゥルモンドを代表するお菓子の1つに、なり得る可能性を感じたからです。
武蔵小山の皆さんのお土産にも、どんどん使ってほしいですし。

和栗のパウンドケーキとはまた違う方向ですが、その原価率の高さは、作業効率でカバーしていきたいと思っています。
皆さまがたくさん買ってくださると、作業効率は良くなります(笑)

まとめ

無題
パティシエの皆さんも食べて、こんなレモンケーキが作れるんだ、と経験しても良い出来栄えです。
パウンド型で作って「ケーク シトロン」とすれば、立派なフランス菓子です。

トゥルモンドのお菓子は、そういうものが結構あります。
お店の雰囲気や、くまのシュークリームなどで勘違いされてらっしゃる方も多いですけど。

素材は良いものを使いたいし、美味しいものを作りたい。それでいて、お子さまや普段お菓子を食べない人も含めて、
眉をひそめながら、ケーキの層をほじくりながら食べるのではなく、
その場の雰囲気も含めて、笑って楽しんで食べてほしいんですよね。

その楽しい時間に、トゥルモンドのお菓子を、ひとつのメニューとしてお邪魔させてもらえると、この上なく幸せです。

キュンとした酸味と、グラスアローのシャリシャリとした食感と、甘味の調和がとても心地よい、『リモーネ シチリアーノ』を、ぜひよろしくお願いします。

レシピの最新版を公開しています。

https://note.mu/sakashita

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